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8月の東京で冷房もない自分の部屋で読んでいたのですが、読んでいる間はうだる暑さを忘れました。本のタイトルになっている『冬の犬』なんて、まるっきり厳寒の中でのお話で、背筋が寒くなります。 短編集で犬をはじめ、羊、牛、馬といろいろな動物が出てくるのですが、まるでにおいをかげるほど近くにいるような感覚にとらわれるくらい、著者は彼らの生態を絶妙に描き出しています。 人の行動も含めて描写が生々しいのですが、読み終えると何かおとぎ話を読んだ後のようで、とても不思議な印象を持っています。
02.
「赤毛のアンブーム」で観光客が増える前の、カナダ沿岸部。 生き生きとして、みずみずしい描写だけれど、 単なる、美しい自然への礼賛ではなくて、 そこに暮らす人々に試練を与える過酷な環境。 その厳しい寒さや孤独を舞台の上でリアルに描かれる、 人間と、動物たちの生と性。 大人も子供も、当たり前のように命と向かいあって生きている、 と紹介すると、文体やストーリーは無骨なイメージを 持たれるかもしれませんが、実に洗練された、趣味のよい世界です。
03.
前作に続いて今回も良かった。ってこの作者の書くものを悪く言う人はいませんから、あらためて言うことでもないんですけどね。しかし、いい!マクラウドの描く世界は哀切に満ちて、叙情にあふれている。自然の厳しさ、家族の温かさ、時代の移り変わり、そして故郷を追われた流浪の民としての悲哀。ただ、そこで暮らしている人達を描いただけなのになぜこれほどドラマティックなんだろうと歯噛みしてしまいます。 朴訥で、頑固で、しかし情にあつく毎日を必死で生きている人達。我々が知ることのないもうひとつの世界。すぐそこにあるのに、あまりにも遠いその世界が厳しさを押しのけて、とてもうらやましく思えてきます。得がたい本ですね。ほんと宝物だ。
04.
とても静かなんですが、その静けさの中に激しい真実が垣間見えるっていうのかなぁ、なんかつくづくぼくは心配の少ない平穏な日常に埋没してるなぁと感じました。地球上には色んな場所があり、おんなじ家族を描くにしてもこれほどの隔たりがあるのかと。 生と死のイメージがあまりにも頻繁にあらわれ、だからこそ生命への力強いメッセージがびんびん伝わってきました。いつも灰色の雲に覆われて、ことあるごとに風雨にさらされている情景は、陰鬱で冷たい世界を象徴しています。でも、その中で毎日を真剣に生きている真っ当な人々のあまりにも厳しい生活が浮きぼりにされ、力強い生命力が強調されてるんですよね。 この作品で描かれる家族は、ほとんどが子の目を通して見る親や祖父母の姿なんですよね。そういったものは、世界共通だからとても身近で一種の郷愁にも似たせつなさを呼び起こします。普遍的だといわれる所以でしょう。余韻が残るのはそのせいでしょうね。 でも生活や風習はまったく違う。ぼくはこの本を読んでラテンアメリカに通じるマジックリアリズムの匂いも感じました。独自の文化が目新しく、そういった意味でもとても魅力的です。 あまりにも身近な自然の脅威。その中で身につけて代々伝えられてきた風習、独自の文化。こういった世界が今生活している我々とはあまりにもかけ離れているため、新鮮な驚きを感じます
05.
季節はずれの猛吹雪を窓の外に、この本を読んだ。
冬を題材にした物語の中に、すうっと自分が入り込んでしまうのを感じる。
僻地、厳寒、貧困・・・
ひとが生きていく上でおよそ考えられるすべての困難な要素が盛り込まれた土地なのに、
このケープ・ブレトン島が魅力的に思えてくるのはなぜだろう。
たぶんそれはわたしたちが得たぬくぬくとした便利さと引き換えに、
失ってしまったものの存在を、その大きさを、そこに感じるからなのだ。
子どもの頃「たからもの」としてしまっていたものは、
大人になってから見るとつまらないがらくたにしかすぎなくてびっくりすることがあるが、
この本にはあの頃のわたしのたからものが、たくさん詰まっている気がした。
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