思想・社会


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自分を知るための哲学入門 (ちくま学芸文庫)
価格:¥ 777(税込)

【俺達の評価】
4.5点(5点満点)
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「自分」を生きるための思想入門 (ちくま文庫)
【俺達のコメント】
01. レビュアのスタンス:哲学未体験
完読所要期間:3-4週間(40-50時間)
読みやすさ(文章):★★★★★
面白さ(内容):★★★★★

哲学は初めてだが、純粋にとても楽しめ、感動すら覚えた。
1章で”哲学の魅力”を語り、2章以降で”哲学の流れを追う”というスタイルをとるが、
2章以降で、筆者の見解を交えながら、哲学の流れを追うことで
1章で示した哲学の魅力を読者に知らしめる。(これに見事に成功している!)
具体的に、例えば「人はなぜ、醜いものや悪に惹かれてしまうのか」、
「社会の一主体として、人は何をすべきか」に一つの解を与える。

内容の非常に濃い一冊で、読みこなすのに時間をとても必要としたが、
最後まで読むことで、ものの見方・考え方が変わった。
哲学にまったく触れたことが無い多くの人々に、
この書に触れてもらいたいと切に思う。

小難しい言い回しも、意味を性格に伝えようとする目的に留められており、
非常に良かった。

しいて気になった点を挙げると、
わかりやすいように、現在の話題を確認するような箇所で、
同じ内容を複数回繰り返し、冗長に感じてしまう箇所がいくつかあった。
また、1章の”良い読書会を開くコツ”といった話題は、完全に”哲学の入門書”というテーマとずれている、自重すべき。
また、筆者は現象学をヒイキにしているため、その点で読者を選ぶかもしれない。

02. 最近、入門書を読み漁る機会があったのですが、哲学史の最初の一歩としては、この本はかなり読みやすい方だと思います。有名な哲学者の自伝的エピソードと、その哲学者の哲学が、現代人にとって、どんな意義があるかを、著者独自の観点から解説しています。入門段階では、専門家がある程度、主観的にグイグイひっぱっていく方が、教科書的に書かれたものより、逆にとっつきやすいのかもしれません。が、自我への執拗なこだわりや、実存主義や現象学が最強だよ的な主張が強いので入門者の方は、少し合わないと感じたら無理に読まなくてもいいとは思います。

他にも竹田青嗣は、プラトン入門、ニーチェ入門、ハイデガー入門、現象学入門、などなど、わかりやすい入門書を書いています。高校生くらいのうちに、これらの入門書で哲学史の基礎を身につけていくと、大学に入ってから思想系の本を読むのがぐっと楽になりますよ。

ただし、自己了解を通して世界との関わりを模索するという、竹田流の方法論はわかりやすい反面、油断すると宗教のようにはまる危険があり、いつまでたっても竹田青嗣の入門書から抜け出せないなんてことが、多々あるようですから、警戒しながら読んだほうがいいですよ。まぁ哲学の本ってのはどれも警戒しながら読むもんなんでしょうけど。著者は狭く深くというタイプの方なので英米系がごっそり抜け落ちていたりしますが、取り上げる個々の思想家に対する著者の理解の深さは信頼できると思います


03. 治療の手だてが無いガン患者やエイズ患者に対する終末治療では、スピリチュアルケアの権威である村田久行教授の「傾聴理論」で絶望した心を援助できることが知られている。ホスピス病棟の小澤竹俊医師は、傾聴による共通理解(確信成立)のメカニズムをフッサールの「現象学」に対する竹田青嗣教授の考え方に学んだと述べている。
村田氏は「傾聴」の見本がブッダ釈尊の「阿含経典」等にあることを指摘し、小澤氏は竹田哲学の現象学解釈で傾聴プロセスの解明に役立つとする。「ターミナルケアにおいて、釈尊とフッサール哲学がどのように関わるのだろうか?」という疑問が、本書を読むきっかけであった。
本書は、“哲学の本質(本性)は、まさしく「哲学する」ことにあって、「哲学」を知るところにはない。”ことを分かりやすく述べている。お陰で、小澤氏が竹田氏の「現象学」解釈に注目する理由も了解できた。「主観の間(相互主観的な)の妥当の一致」に導かれることが「傾聴」のプロセスであるからだ。

しかし本書を読んで、それ以上の収穫を得た。釈尊の教法と哲学を比較できたからである。釈尊は「ヴィパッサナー瞑想」によってブッダになったとされる。ヴィパッサナー瞑想は漢訳で「四念処観」とも訳されるが、パーリ経典の内容は正確に漢訳されなかった。四念処とは身念処(身体と呼吸体を瞑想)→受念処(感情を瞑想)→心念処(心を瞑想)→法念処(四聖諦などの法を瞑想)と進む。本書のキーワードを用いると、存在論は身念処観で卒業し、価値判断は受念処観で卒業し、主体論は心念処観で卒業するという対応づけが出来そうである。こうした観点から、現代思想の判りにくさを整理できるかも知れない。



04. 知人に勧められて読んだ一冊。知人によると「19世紀の有名なドイツの哲学者はだいたい『いろいろ考えたけど、生きてるだけですばらしい!!』って結論なんですよ」というなのだが、本書の眼目は、その「生きているだけですばらしい!!」に、哲学者たちがどのような思考の道筋を辿って達したのかを解説することである。

レビュアーは高校時代、社会科教師のいかにもキャラクター的な授業の犠牲者となった(ニーチェ=ニヒリズム! とか、厭世主義=ショーペンハウアー! みたいな)のだが、竹田氏はそのようなあり方について本書で「単なる“学”としての哲学ほど無用なものはない」と厳しく批判している。哲学とはあくまで「自分を知り、生き方を豊かにする」ためのものだというのが竹田氏の一貫した姿勢なのだ。

ただし、他のレビュアーも指摘しているように「哲学を体系的に学びたい人」や「哲学の全体像」を知るための本ではない。本書はレビュアーのように哲学のことを知りたいけど、他にやることはいくらもあるという人向けの「教養書」だ。しかし、そこに書かれているのが単に知識としての哲学ではないということは前述した通り。生きた(ひょっとしたら実生活で役に立つかも知れない)知恵を得るための本に仕上がっている。

ソクラテス、スピノザ、ニーチェ……レビュアーにとって知識の中にしかなかった哲学者たちの思考を、生きた知恵として発見し直す機会を与えてくれた竹田氏と知人に深く感謝したい。

05. これをよむと、哲学は生きるためにある、ということがよく分かる。哲学者たちの、苦悩、快哉の息づかいが聞こえてくるようだ。
竹田氏の著作はいずれも、学問としての(もっといえば、ガクシャの占有物、知的威嚇物としての)「哲学」とは全く無縁のもの。彼は、「よく生きる」=「哲学する」ことを教えてくれる。いや、彼自身が、今もなお、そういう意味で「哲学しつづけている」のだろう。
いまを生きる若いひとたちにこそ読んでほしい、「自分を生きるための哲学入門」。

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