思想誌


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自由は進化する
(山形 浩生)
価格:¥ 2,940(税込)

【俺達の評価】
4.5点(5点満点)
【俺達はこんな本も買っている】
解明される意識
【俺達のコメント】
01. 自由と言う概念の進歩の話かと思って読み始めた。読んでみると、「自由意志はあるか」という問いに対して、「ある」方の立場に、進化論のスパイスをぱらぱらと振りかけたものだった。

自由意志否定の決定論なんて、不確定性原理とカオスで破綻しているんだから、ごちゃごちゃ言う必要もない。それに、自由意志擁護のの立場も、すぐにデカルト劇場が出て来て、めちゃめちゃプリミティブ。

この問題は、結局「自意識とは何ぞや」という問題に集約される。それを解かない限り、デカルト劇場から一歩も出ることはできない。では、このような哲学的な議論で「自意識」が理解されるかというと、2000年出来なかったことが突然出来るわけはない。いつになるか定かではないが、脳科学と計算機ベースの認識科学が明らかにしていくのだろう。

それが明らかになっても、自由意志は絶対にあると「私」は思うし、明らかになるまえなら、いよいよ自分の自由意志を尊重していくことが重要だと「私」は思う。

02. 「利己的な遺伝子」とか「ミーム・マシンとしての私」とか、今まで読んだ本と関連があって、しかもこれとこれがそうつながるかぁー!みたいのがあって、自分の興味にあった本だと思ったけど、ちょっと難しかったのは自分の知識が足りないからだと思う。ので、参考文献に載っている本を読んでみようかなとかデネットさんの本を他のも読んでみようかなーと思う。

「人間は自分の意志で行動してるつもりかもしんないけど、実はライフゲームと同じで、初期設定のルールで自動的に結果が決まっていってて、自由意志で行動を変えるなんて幻想かも?パラレルワールドみたく別の結果ってのも有り得ないし」っていうアイデアは、え!そんなバカな!・・・でも有り得るかも・・・・でも、そうであって欲しくない・・・ってこうやって考え込むことも自分の自由意志じゃなく最初の設定で決まってたってこと??とかモヤモヤしながら読んでからずっと気になっている。モヤモヤするけど今まで考えもしなかった考え方に触れて、読んでよかったなーと思った。

日本語がちょっと・・・翻訳の本って訳文が堅すぎで読みにくいのはよくあるけど、くだけすぎて読みにくいような気がして、こんなの珍しい。同じ山形さんの訳で「コモンズ」とかは読みやすかったんだけど。読みにくいのが日本語のせいか確認するためにも内容の理解を深めるためにも原著をよんでみようかな。

03. 自由を進化で考える。哲学書としてはかなり独特な切り口である。
 「動こう!」と意識するよりも前に筋肉には電位が発生しているという実験(ベンジャミン・リベット「マインド・タイムー脳と意識の時間」に詳しく書かれている)や、「すべて決定された世界」としてのコンピュータシミュレーション世界などを詳しく説明しながら、「自由はあるのか」、「自己とはなにか」などの問題を考察していく。
 著者の論は進化論に基いていて、「自由も生物が進化で獲得したもの」「世界が物理法則に従っていても、そこから自由は進化できる」と言うわけである。道徳や倫理も進化の産物、というのであるが、これは既にマット・リドレー「徳の起源」などがあるので、考え自体はそれほど新しいわけではない。それでも哲学が構築してきた「自己意識」や「自由意志」「理性」といったものを最近の科学的なデータと結びつけたらどうなるのかの一つの考え方、自由という視点でとらえたことという点からは一読の価値があるだろう。ただ、やはり実験のデータなどをもとにした決定論や不可知論の話に偏ってしまい、哲学書というよりは「少し哲学よりの(ある種の)進化論、科学書」のように読めてしまう。

 しかし、それにしても読みづらい本である。まず長い。8章、9章の「自己とはなにか」とか「自律性」、「道徳の発生」など、核心の話題に到達するまでだけでも本筋を見失いそうになる。その辺の読みづらさについては翻訳者がちゃんと代弁してくれていて、親切な要約解説をつけてくれている。著者とは少し意見が違う部分についても書かれている解説なので、読者にも批判的に読む姿勢を喚起してくれる。親切ついでに、本書で引用される重要な文献のうち、邦訳で読めるようなものの一覧や、索引を用意してくれればよかったと思う。なにしろこんなに長く、話が見えづらい本なのだから。
 そして、「〜ってなに?・・・なんだ。すご〜い。」という調子で書かれている文章。軽く滑っていくような文体は好みが分かれるところだろう。訳者解説までこの調子なので、この文体が「合わない」読者には評判が悪い本だと思う。著者の「ダーウィンの危険な思想」が厚すぎて普通の文体では読み通せなかった、と言う方には、逆にこちらの方が読みやすいかもしれない。どちらも基本的に著者の考えは同じである。
 

04. まず訳がすばらしいのですいすい読める。

筆者のスタンスは、決定論ではあるがその中に自由意志(または普段私達がそう考えているもの)はある、というもの。決定論でありかつ可避性もある、ということ。

過去については、決定論だろうが非決定論だろうが、そもそも「回避できた」なるものがいかなる視点からなされているのか批判。決定論では十分条件はわかるが必要条件はわからないので、自由意志の余地はある。

未来については、そもそもいかなる決定がなされているか把握しようがなく、個人から見れば自由意志はあると考えても同じ。そして、危機を回避できたものが生き残るのだから、回避しようとするべき。

って感じかな。訳者解説は賛否両論あるっぽいので、口ははさまないことにする。

ともかく一読の価値はあると思います

05. 自由意志を否定する各種主張を自然科学的立場から、丁寧に(くどく、しつこく)つぶしてくれている、確かに「とんでもない本」でした。

即ち、(訳者の山形さんが解説でまとめてくれてるのですが)
・物理学的なもの(ラプラスの悪魔理論)
  「世界は原子とか素粒子でできている。それらの動きはすべて物理法則で決まっている。
  ならば、ぼくが何を感じ、何を考え、何を選ぶかも決まってるんじゃないか」
・生物学的なもの(利己的遺伝子)
・疑似生物学的なもの(ミーム説)
・遺伝・環境要因的なもの(条件付け説)
・脳科学的なもの(ユーザーイリュージョン説)

これらに対して、自然科学的根拠に立って、反論してくれているところがすごいです。

自然科学が新たな発見をし進歩するにつれて、哲学や思想的なものは多くの場合、説明しきれない矛盾が露呈するように思えてビビってしまい、
「伝統を信じて目を閉じ」ようとしてしまうものなのでしょうが、ダニエル・C・デネットは違いますね。
真っ向勝負という感じでしょうか。
「自然科学的立場にたった哲学構築」をやっています。
哲学って、こんなすごいんだ、と思っちゃいますね。

それが真実ならば、科学が進歩して、いろいろなことが解明されるほど、その真実がよりよく説明できてしかるべきはず。だから恐れるに足りない、と私は思います。デネットの態度には共感するのですよね。


一読し終わって、全体の論理展開の見通しは難解なため、「再度、読み込みが必要だな」と思って山形さんの訳者解説を読んだところ、まさにその私のニーズに答えてくれていて、これがまた素晴らしかったです。
極めて簡潔にまとめてくれていて、とても有り難いものでした。(「訳者解説も必読」という帯の言葉にウソはなかった)

訳者解説が本当に(!)本書の内容を解説してくれていて、解説を読んで初めて本書の内容の見通しがよくなりました^^
いやいや、これほど、解説が本当に解説になっているものもないですね。


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