環境・エコロジー


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文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
(楡井 浩一)
価格:¥ 2,100(税込)

【俺達の評価】
4.5点(5点満点)
【俺達はこんな本も買っている】
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
【俺達のコメント】
01.  内容については他のレビュアーの評価通り。非常に面白い本である。訳文もとてもこなれていて、非常に読みやすい。ただ、原文と照らし合わせて読むと、訳抜けや誤訳が大量に見つかるので、星一つ減らして三つにしました。

訳抜けの例:訳書32頁「非環境保護主義=企業利益優先主義という等式は成り立たない。環境保護主義に懐疑的な人の中には、大企業や経済界に属さない人も多いからだ。」原著15頁では、non-environmentalist=pro-business is imperfect, many businesspeople consider themselves environmentalists, and many people skeptical environmentalists' claims are not in the world of big business. 訳文では二つ目のセンテンス「多くの実業家は環境保護主義者を自ら任じている」が抜けている。

誤訳の例:訳書107頁「スティーヴは、次期選挙に立つ意欲を失ってしまった。」原著65頁Steve lost his subsequent bid for reelection. 原文のlostは「意欲を失う」ではなく、「選挙に負ける」の意だから、正しい訳文は「スティーヴは再選を目指したが、落選してしまった。」

誤訳の例:訳書136−137頁「イースター島の作物であるバナナ、タロイモ、サツマイモ、サトウキビ、カジノキは、おもに東南アジアを原産とするポリネシア特有の作物だ」原著86頁Easter's crops ware bananas, taro, sweet potato, sugercane, and paper mulberry, typical Polynesian crops mostly of Southeast Asian Origin. 問題点は二つで、まずこれらの作物の多くはミクロネシアや東南アジアでも栽培されていたから、typicalは「特有」ではなく「典型的」と訳さねばならない。もう一つ、mostlyは「おもに」より「ほとんどは」と訳した方が、「これらの作物の中には東南アジア原産ではないもの(サツマイモは南米原産)もある」という含意を適切に表現出来るだろう。

怪しい訳の例:訳書137頁「海上及び農耕生活を送っていたとされる人々」原著86頁seafaring and farming people、「seafaring」は航海、特に遠洋航海を意味する言葉なので、「海上生活」はかなり変な訳語。「遠洋航海と農業で暮らしていた」で良いのでは。この直後の「(ラピタ人が)ソロモン諸島東域の開けた海上で1600キロメートル近く波に流され」swept nearly a thousand miles across the open oceanは致命的な誤訳。swept(sweep)には「通過する」という意味もあるし、構文を見ればこのsweptは他動詞ではなく自動詞であることもわかるのだから、「1000マイル近い外洋を一気に通過し」としなければ。特にラピタ人・古代ポリネシア人が漂着ではなく意図的航海で西ポリネシアに到達したことは、ポリネシア考古学史上最大の論点でもあったのだから、それを踏まえないこの訳はちょっといただけない。

 だいたい、このレベルの誤訳が原著見開きで2箇所か3箇所は見つかるのだから、この訳者の訳文は、大意は伝えているものの、細部は相当にいい加減だと言うしかない。この訳者は3ヶ月か4ヶ月ごとに1冊のペースで翻訳書を量産している人なので、仕事が雑になっているのかもしれない。文法構造の解析もしている気配が無いし、関連資料も読み込んでいないのだろうし、訳語の検討もおざなりだ。訳書167頁の「安心して棲める天国そのもの」など、原著105頁を見るとideal safe haven(理想的で安全な待避所)だった。haven「待避所」とheaven「天国」を混同しているのだ。酷いものだ。

 以上のような理由から、大まかな内容を掴むのならこの翻訳でも良いが、精読したり論文に引用したい場合は絶対に原著を確認すべきと警告しておく。



02. 「銃・病原菌・鉄」で文明の成り立ちを論じた著者が、今度は文明の崩壊を考察している。

前著と同様、数々の科学的客観的事実を現地の伝承とつきあわせて考察していく過程は圧巻である。

ただ、上下巻を通して著者が伝えたかったことは環境の大切さということであろうが、

特に下巻の現代の環境危機を論ずる内容は、それ以前の客観的で冷静な考察とは一転して、

感情的で主観的な記述となっているように感じる。

上巻のイースター島を始めとするポリネシアの文明崩壊についても、

ポリネシア人の住む多数の島々の極めて稀な例であることを明記すべきと思う。

ゆえに★4つ。

03. 「何故ある文明は環境とうまく渡り合って存続し、ある文明は失敗したのか」
「何故冷静に考えると滅びに向かうような決断を行うのか」

成功・失敗事例を過去・現在にわたり追いながら、この疑問に迫っていく。
著者なりの回答とその対策については、実際に読んで頂きたい。

前著ではかなり偶然的な動植物の資源・地勢などの環境的な布置から栄枯盛衰の必然を
説明してみせた。「環境破壊」に焦点があるものの、本書でもその基本路線は変わらない。
一見すると環境決定論者のようだが、政策や企業への実践的思想、人々の心性の重要性に
ついて熱く語っており、環境問題がいかに逼迫しており、今すぐにでも、一斉に解決しな
ければならない問題なのか伝わってくる。
但し、やや冗長。ゆえに。★ナイナス1。

巨大な「おくされさま」になりつつある中国が、このままのペースで発展・消費していった
ら、世界はどうなるのだろう。「近代世界システム」としての資本主義はその時みずからの
死を選び取るのか?それとも・・・奇跡的な価値観の転換を織り込むのか?




04.  現生人類は、知らないことに対して傲慢になりがちなのかもしれません。たった数千年の歴史の中でも、繰り返し何度も文明が崩壊してきているのに、その事実を知らない間は、いくらでも自然に対して傲慢になってきたわけです。ただし、現時点の地球温暖化問題に代表される危機は、もし崩壊したときには人類としては再チャレンジできないかもしれない瀬戸際にきているかもしれません。
 年初にアル・ゴアの「不都合な真実」を映画で見たあとは、時事のニュースを見ていても環境問題に一番の関心が向くようになっています。そこに、あのジャレドダイヤモンドの新作が書店の店頭にずらりと並んだのでドキッとしました。当初の期待以上の知識・知恵を授けてくれました。

 末尾で第三者的な態度の典型のいくつかがあげられていますが、その中のひとつ、
「自分が生きている間は、それほど大きな問題にはならないだろう = 解決は未来の世代の課題であって自分には関係がない」
にははっとさせられました。次世代以降におしつけられればそれでいいかどうかはわかりませんが、確度の高い予測ではもっと早く私たちの生きている間に大崩壊がおきる可能性も小さくはないとわかれば、また話は違ってくるでしょう。


05.
前著の"Gun, Germs, and Steel"は、人類文明の発展度合いに格差が生じた原因を地域特性や環境をキーに判りやすく説明した大作で、初めて知ったことが多く非常に感銘を受けたが、本著では逆に人類文明の崩壊がテーマとなっている。

上巻ではイースター島やバイキングのアイスランド等における過去の文明社会の崩壊の要因が、人類による環境破壊、気候の変化、敵対文明の登場など共通性があることが描かれており、実に興味深い。その一方で、同様の危機に直面しつつも、環境に適応して生き延びた社会の事例も紹介される。その中には意外にも徳川幕府による森林保護も含まれている。

下巻では一転して現代社会が取り上げられる。環境破壊が大量虐殺につながっているアフリカのルワンダやハイチの状況が描かれ、過去の話と思っていた環境破壊による文明社会の崩壊がとたんに身近に迫ってくるのが怖い。個人的にショッキングであったのは自然豊かな国というイメージのあったオーストラリアの状況だ。また、過去に自国の森林保護に成功した日本が、現代においては他国の森林破壊を行っている状況は皮肉だ。

本書により、豊かな生活を享受している先進国の文明社会の基盤が揺らいでいることと、過去の教訓を無駄にすることなく現実を直視して地球環境と共存した生き方に転換する時期に来ていることを実感させられた。大変な労作であり、面白くかつ考えさせられるので、是非一読されることを推薦したい。

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